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奈良地方裁判所 昭和57年(わ)339号 判決

本籍

奈良県桜井市大字河西二七六番地

住居

右同

会社役員

吉井忠雄

昭和七年一〇月四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官平田建喜出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年および罰金一、二〇〇万円に処する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、奈良県桜井市大字河西一七四番地において、吉井はるさめ本舗の名称で、そうめん、はるさめの製造販売業を営み、その業務全般を統轄していたものであるが、右業務に関し、その所得を秘匿して所得税を免れようと企て、

第一  昭和五四年分の総所得金額は八、三三八万六、一九四円、これに対する所得税額は四、五三七万八、〇〇〇円であるのにかかわらず、売上の一部を除外し、よって得た資金を株式等として留保するほか、たな卸を除外する等の不正手段により、その所得金額のうち六、二三〇万九、六四四円を秘匿したうえ、昭和五五年三月一四日同県桜井市粟殿一八五番地の四所在の所轄桜井税務署において、同署長に対し、総所得金額が二、一〇七万六、五五〇円、これに対する所得税額が六五三万四〇〇円(ただし計算誤りのため、六二七万五、九〇〇円と記載)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって右五四年分の正規の所得税額四、五三七万八、〇〇〇円との差額三、八八四万七、六〇〇円をほ脱し

第二  昭和五五年分の総所得金額は五、〇八四万二、三一六円これに対する所得税額は二、三七〇万一、三〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち二、七八三万六、四六九円を秘匿したうえ、昭和五六年三月一六日前記桜井税務署において、同署長に対し、総所得金額が二、三〇〇万五、八四七円、これに対する所得税額が七四九万五、二〇〇円(ただし計算誤りのため七一七万六、二〇〇円と記載)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって右五五年分の正規の所得税額二、三七〇万一、三〇〇円との差額一、六二〇万六、一〇〇円をほ脱し

第三  昭和五六年分の総所得金額は五、一一四万三、八七七円、これに対する所得税額は二、四三三万五、〇〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち二、九九七万九、二六六円を秘匿したうえ、昭和五七年三月一二日前記桜井税務署において、同署長に対し、総所得金額が二、一一六万四、六一一円、これに対する所得税額が六八一万六、六〇〇円(ただし計算誤りのため六五二万五、六〇〇円と記載)である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって右五六年分の正規の所得税額二、四三三万五、〇〇〇円との差額一、七五一万八、四〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示第一、第二および第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料

一  大蔵事務官作成の昭和五七年六月一八日付、同年六月二六日付、同年七月六日付(検一三号)、同年七月六日付(検三八号)、同年七月六日付(検四〇号)、同年七月一五日付、同年七月一六日付、同年七月二〇日付、同年七月二二日付、同年七月二八日付、同年七月三〇日付、同年八月一六日付(検九号)各査察官調査書

一  大蔵事務官の村里フクエに対する昭和五七年四月二七日付、同年七月一〇日付各質問てん末書

一  大蔵事務官の冨岡健治、永田公也、白石冨美子に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官の倉田正信に対する昭和五七年一〇月一五日付質問てん末書

一  大蔵事務官の吉井満雄に対する昭和五七年四月二七日付、同年八月九日付各質問てん末書

一  大蔵事務官の原博に対する昭和五七年四月二七日付、同年七月三日付、同年一〇月一五日付各質問てん末書

一  大蔵事務官の吉井陽子に対する昭和五七年四月二七日付、同年五月二〇日付、同年七月二〇日付各質問てん末書

一  原博、吉井陽子の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官の被告人に対する昭和五七年四月二七日付、同年五月二一日付、同年六月一五日付、同年六月一九日付、同年七月七日付、同年七月一七日付、同年七月二九日付、同年八月四日付、同年八月五日付、同年八月二三日付、同年一〇月一五日付各質問てん末書

一  被告人の検察官に対する昭和五七年一二月六日付供述調書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の昭和五七年一〇月二二日付証明書(検一号)

一  大蔵事務官作成の昭和五七年一〇月二五日付脱税額計算書(検四号)

一  大蔵事務官の吉井陽子に対する昭和五七年八月五日付質問てん末書

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の昭和五七年一〇月二二日付証明書(検二号)

一  大蔵事務官作成の昭和五七年一〇月二五日付脱税額計算書(検五号)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の昭和五七年一〇月二二日付証明書(検三号)

一  大蔵事務官作成の昭和五七年一〇月二五日付脱税額計算書(検六号)

一  大蔵事務官作成の昭和五七年五月一二日付、同年五月一七日付、同年七月六日付(検一四号)、同年七月六日付(検一八号)各査察官調査書

一  大蔵事務官の倉田正信に対する昭和五七年五月二〇日付質問てん末書

一  大蔵事務官の吉井陽子に対する昭和五七年五月二一日付質問てん末書

一  大蔵事務官の嶋崎善太郎、保田良信に対する各質問てん末書

を総合して、それぞれこれを認める。

(法令の適用)

被告人の判示第一および第二の各所為は、いずれも昭和五六年法律五四号付則五条により同法律による改正前の所得税法二三八条一項に、判示第三の所為は、所得税法二三八条一項に、それぞれ該当するので、所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上の各所為は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人を懲役一年および罰金一、二〇〇万円に処し、諸般の情状を考慮して同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 梨岡輝彦)

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